建築を旅してplus
旭川市 編(Ⅱ)①
西倉倉庫
この西倉倉庫は昭和2年創業とありますが、今日まで各種施設を備える倉庫会社として発展してきました。
現役である倉庫の、その凛とした表情からは、丁寧に建物を管理してきたことをうかがい知ることができます。
さて、このエリアには重厚な石造り倉庫棟が郡をなして配置され、妻面が通りに面しています。角地に建つ1棟だけ寄棟屋根で開口部にもアーチが用いられるなど、他の建物とは異なった意匠を示しています。これらの建物は美瑛軟石で作られており、一部には瓦屋根も残っています。なお、石造に囲まれて、木造建築が存在していますが、厳つい石造りの表情の中で、唯一、穏やかな表情を見せてくれています。
竣工 - 1927年(昭和2年)- 諸説ある
構造・規模 - 石造平屋建など
所在地 - 旭川市5条13丁目
受賞歴・指定等 - 第5回旭川市景観賞
設計者 - 不明
施工 - 不明
旭川市 編(Ⅱ)②
合同酒精株式会社旭川工場旧蒸留棟
昔の話ですが、かつて、旭川叢書:「あさひかわの建物」が発行されたとの情報を得て、早速取り寄せてみました。驚いたのは何といってもこの建物(酒精工場の蒸留棟)です。
「このような煉瓦造のタワーが現存しているんだ」という驚きがありました。それから、さらに35年近くが経過しましたが、やはり何も変わらず建っています。「凄い」の一言ですよね。
煉瓦造ですが、内部は鉄骨で補強され、1933年(昭和8年)5階部分が増築された時には軌道用レールが使用されたとのことです。上部の屋根の形状や丸窓が印象的です。
合同酒精(株)旭川工場の敷地内に建つ、この建物は今でも地域のランドマークになっています。
竣工 - 1914年(大正3年)
構造・規模 - 煉瓦造5階建
所在地 - 旭川市南4条20丁目
旭川市 編(Ⅱ)③
上川郡農作試験所事務所棟
この建物は北海道庁により1886年(明治19年)に農産試験所事務所として建設されています。試験所官舎として使用されるかたわら、上川郡を訪れる官吏等の宿泊所としての役割を担っていました。それ以降の変遷をたどっていきます。
1887(明治20)年には上川道路の築造にあたっていた樺戸監獄所の忠別太出張事務所となり、1888(明治21)年から23年にかけて,建物の一室が上川二等測候所として観測に使用されます。
1889(明治22)年には、官設駅逓として一部貸与され、忠別太駅逓第一美英舎として開駅しましたが、やがてその役割を終え、1903(明治36)年には廃止となります。なお、1946年(昭和21年)には駅逓制度自体が廃止となっています。また、駅逓については道央編Ⅰ②旧島松駅逓でも述べておりますので参照ください。
さらに、個人宅として使用された後、1966年(昭和41年)に、上川地方に現存する最古の建物として旭川市文化財に指定されました。
1987年(昭和62年)には調査保存のため一時解体されたものの、翌年1988年(昭和63年)に再度復元され現在に至っています。
これら、めまぐるしい変遷からは、開拓期に大きな役割を果たしてきたことがわかりますし、建築史的にも、当時の住宅様式を伝える洋風建築様式として貴重なものです。
竣工 : 1886年(明治19年)
構造・規模 : 木造平屋
所在地 : 旭川市神居1条1丁目1番30号
受賞歴・指定等 : 旭川市指定文化財
旭川市 編(Ⅱ)④
旧旭川国鉄工場 ─ 旭川市民活動交流センター(愛称:CoCoDe)
上の写真を見ていただきますと、2棟の煉瓦建造物がありますが、これらは旧国鉄の工場で、鍛冶工場や旋盤工場として使われていたものです。現存する旧国鉄工場施設としては国内で最も古い建物の一つであると言われています。
2010年(平成22年)6月29日には、活力ある地域づくり、市民が活躍するまちづくりを目指した、市民活動のための公共施設:旭川市市民活動交流センター(愛称:CoCoDe) として、改修後、開館しました。現在は特定非営利活動法人旭川NPOサポートセンターが指定管理者として旭川市から委任を受け、運営しています。
市民活動に関する情報の収集及び提供、市民活動に関する相談・コーディネート、会議室等施設の貸出、コピー・印刷機など事務機器の貸出 、市民活動団体やまちづくりに関わる色々な団体との交流や協働の促進などを主な業務としています。
下にも写真を添付しましたが、壁面のアーチ型の開口部や焼過ぎ煉瓦の装飾が素晴らしいです。旭川は、大きな地震が少ないせいか、沢山の煉瓦造建築が現存していますね。
竣工 :1899年(明治32年)
構造・規模 : 煉瓦造及び鉄筋コンクリート造平屋一部2階建、金属板葺、建築面積462㎡
所在地 : 旭川市宮前1条3丁目3-30
設計者 : 田辺朔郎
受賞歴・指定等 : 登録有形文化財
旭川市 編(Ⅱ)⑤
松岡木材旧事務所・松岡家住宅
旭川は古くから、道北の物流拠点という経緯もあり、家具産業などを始めとした林業が栄えた町でしたので、多くの木材関連会社が存在していました。
松岡家住宅棟(写真右)を見てみます。
木造2階建ての数奇屋風の和風棟と洋風棟からなっていますが、和風棟は入母屋屋根で、幅広い破風板の曲線、鬼瓦、懸魚の装飾が施されており、外壁は押縁した黒色の板張りに横長の細長い連続窓など、日本の伝統的な外観となっています。
さらに、正面横には小規模な洋館が存在しています。
なお、木材商らしく、数年かけて木材を吟味し、乾燥させた材料を使用したとのことです。
松岡木材旧事務所棟(写真左)は木造2階建ての和洋折衷建築です。
外壁は黄色いタイル張り、上下窓、半切妻屋根は当時のモダン建築です。
正面には縦長窓が配置され、出入り口の上部には太いまぐさ、そして外壁はタイル仕上げになっています。
更に半切妻屋根の平側中央に装飾的な小屋根を架構するなどの手法を用い、洋風化への努力が見られます。
松岡家住宅
竣工 - 1925年(大正14年)
構造・規模 - 木造2階建 295㎡(蔵造含まず)
所在地 - 旭川市6条13丁目
受賞歴・指定等 - 旭川市都市景観賞、国登録有形文化財
施工 - 谷口・岩淵 両大工
松岡木材旧事務所
竣工 - 1937年(昭和12年)
構造・規模 - 木造2階建
所在地 - 旭川市6条13丁目
受賞歴・指定等 - 旭川市都市景観賞
施工 - 谷口玉吉